やえまり               
八重鋺の発見・2
シンギングボウルの工場を訪ねて

2006年7月、雲に覆われて今にも雨が降りそうな、
モンスーン期のネパールのカトマンドゥ空港に降り立ちました。
今回の旅はシンギングボウルの調査です。

ホテルで一息つくと友人の旅行会社・社長・ラジュ・サヒ氏に電話し、
かねてから予定のシンギングボウル工場見学に連れて行ってもらいました。

カトマンドゥから車で40分、職人たちの町パタンの奥にその工場はありました。
細い通路を通り抜け、社長の事務所に案内されたあとに、裏の工場に向かいました。


左手奥には小さな溶鉱炉があり、金属が溶かされています

粘土を固めて土台になった基礎には穴がうがたれていて、
そこに溶けた金属を大きめの柄杓で流し込みます。

冷えた金属板は、大きめの皿のようになっています。
それをカナテコでつかみ、露出した炉に入れます。

職人は左手でふいごを動かし、風を送り、火を強めます。

柔らかくなった材料をカナテコで摘み中央に置くと、
3人のハンマー係りが餅つきのように、
ピストン状に連続して大型ハンマーを振り下ろします。

下のくぼみの形に丸められ始めるのです。

この作業を連続して行ってから、伸ばされた材料は、
次に外のくぼみに持ち出されます。


次に別の小さめの炉に持ち込まれた材料の金属は、
熱されたあとに溶液の中に入れられ、
研磨機により周囲を磨かれます。

       


お椀の縁は厚みを持って作られます。
そのままに同じ厚さだと、いい音が響かないのです。

そのために内側を小さなハンマーで叩くのですが、
技術的にはこの技術が一番難しいそうです。

安いシンギングボウルは、
同じ厚みで切りっ放しのようになっているのです。
シンギングボウル・ヒーリング


翌日はボーダ・ナートで、シンギングボウル・ヒーリングを行っている
サンタ・シャカさんのお店にうかがいました。
彼はドイツやオランダで、シンギングボウルの音楽演奏とヒーリングを行っています。
CDも発売しています。

ボーダ・ナートはチベット難民の集まる、大きな仏塔(ストーゥパ)のあるお寺です。
半円形の白い台座の上に、四角い台が乗り、その上に目玉の描かれ、
黄色い尖塔が青い空に突き上げています。
その尖塔から運動会の旗のように、黄・赤・緑・白・紺の五色の旗が前後左右に吊るされています。
 
丸い台座の周辺には、小さなお店が軒を連ね仏塔を取り囲んでいます。
その一角に彼の店はありました。

丸顔のサンタさんは、もう10年近く、この仕事をしているそうです。
同行してくれた、ラジュさんがヒーリングセッションを、体験しました。


横たわった身体の周辺に、ボウルを置きます。
数は通常は8〜10個ですが、部分的に痛い所がある時は、
その部分にボウルを置いて鳴らします。

「どこか具合の悪いところはありますか?」という質問に、
「イヤー最近は、仕事のことばかり考えてベッドに入っても眠れないんです。」と答えました。
ネパールで観光会社を経営している彼にとって、
最近の政府とマオイスト(テロリスト)の政治事件は大きなダメージになっています。

サンタさんは横たわった身体の周辺にあるシンギングボウルを、
無造作に叩き始めました。
音がゆっくりと長時間響き渡ります。
ボヮーン、ボゥーン、ボヮーン、ボゥーン。

10分もたったころでしょうか、ラジュさんの息が変化しました。
私はサンタさんと視線を合わせました。

小さな声で「Did he sleep?」と聞いたのです。
身体はヨガの「死体のポーズ」のように完全に脱力しています。

それからしばらく、セッションは続きました。
最後にティンシャ(小型シンバル)をチーンと鳴らし、
上から下へとエネルギーを流して終了です。
 
声をかけられて、起き上がったラジュさんは
「いやー、気持ちは良いですね。
でも『眠った・・・?』と話しているのは聞こえていましたよ。」と話すのです。

世間では「人にコントロールされるのは良くない」と考えている人々がいます。
たしかに社長業をするには強い自我が必要でしょう。

でもその強い自我が、彼をストレスに追い込んでいるのです。