得度体験記 2010年春

by 紫雲
機縁


小さい頃から漠然と
「将来は坊さんになるかな・・・」と思っておりました。

この頃の”将来”はたぶん60歳くらいを想定していたと思いますが、
このたび20数年ほど前倒しで、高野山で得度をいたしました。

10代から日蓮聖人が大好きで、これまた漠然としていましたが
日蓮宗で得度をしようと思っておりました。

ところが色々ないきさつで真言宗で得度する運びとなりました。

小林先生の元へ、アポも取らずに伺って早や6〜7年、在家で日蓮宗系宗教団体出身の私が、
出家でないとやらせていただけない四度加行(あそこでは四度加行準備と呼んでいましたが)をやらせていただいたり、

空や縁起などの仏教の基本、密教とは何か?即身成仏とは?覚りとは?などなど、
今思えば得がたい教えを授けていただき現在に至りますが、

とうとうお坊さんに、自分がなることになったわけです。

といっても今回は得度するだけ、阿闍梨になるわけではなく得度するだけなのですが。

いずれは高野山で四度加行・伝法灌頂を受けて阿闍梨になりたいという思いはありますが、
さすがに現在は金銭的にも仕事的にも無理ですので、先ずは貯金から準備をして行こうかと思っております。


なぜ得度をするのか?

元々私は今までやってた法華経の修行を深める意味で真言宗の加行を始めました。

日蓮聖人が密教修行時代に観たものを私も観てみたい・・・今思えば拙い考えではあったのですが、
拙いながらも日蓮聖人に少しでも近づいて、いつか自分も日蓮聖人みたいになって
世の中の役に立ちたい、世の中を変えたい・・・そんな夢を抱いて始めた真言宗の加行でしたが、
やってみると之が面白い面白い。

法華一本槍だった時から、徐々に聖天さまのご信心を平行して始めた頃だったので、
そういう意味でも非常に面白い経験をさせていただいたと思っております。

通り一遍しか知らなかった弘法大師・空海さんについても色々調べてみると、
まあこの人は何から何まで出来ない事は無いのかね?と思うほどの万能ぶり。

元々私は治療家・ヒーラーですが、ある意味日本で一番凄いヒーラーは弘法大師じゃなかろうか?
という思いに至り、弘法大師に連なるヒーラーになりたい、たとえ末席でも・・・と、
相変わらず拙い思いから今回得度に踏み切った次第です。

得度の日にちは3月17日。

この日が私の新たなヒーラーに生まれ変わる日となりました。

発願

小林先生と初めてお逢いした時、どんな流れか忘れましたが”得度”についてのお話になり、
アホな私は初対面の先生に
「得度するとどうなりますかね?」などと質問して、
「そんなのわかんないよ(笑)」
などという会話をしたのを覚えています。

私が修行した四度加行は、本来はお坊さんになってからやる修行で、普通在家の人はやらない修行です。

坊さんでもない私が坊さんと同じ修行をする・・・。
今思うと不思議なことですが、毎週浜松町まで通って2年ほどで無事満行いたしました。

満行して数年後、先生から「高野山で得度をしないか?」というお電話を頂き、正直迷ったのですが
今は時期ではないと判断してお断りいたしました。

その日から私の中に「高野山で得度」というのが目標になりました。

得度前日

初めての高野山。

お世話になる「常喜院」へ向かい、お寺の人にご挨拶。
部屋に案内されて先ずは一息。

とりあえず、得度代五万円を袋に入れて「志」と表書き。
この外に宿泊費一万円、アルバイトの学生さん(ゆくゆくはお坊さんになる方)にチップとして千円、これだけ徴収。

私は乗り物酔いと明日の緊張、そして軽度のアルツハイマーで宿泊費二回払ったりしましたが(笑)
もちろん返ってきましたけど。

お茶とお菓子を頂いて、大人数なので3〜4人ずつ車に分乗して「和装石橋」へ得度の衣装を取りに行く。
私は最後の方なので人が衣装合わせをしている間、お店の中にある輪袈裟など物色。

さて、衣装合わせは一番苦手なことですが先月電話で申し込んだサイズをつけるとやっぱり窮屈なので
サイズの大きなものに替えることに。

衣装合わせが終わり、常喜院に戻って今度は伽藍参拝。
小林先生が持っている伽藍参拝のお経本をコピーしたものを配られ、全員でお堂ごとにお経や真言をあげる。

やっと気がついたが、高野山は寒い。

先日まで雨だったから雪はほとんど消えていたが、お参りした時には溶け残った雪があったし。
それでも真言・お経をあげれば私はどこかへ行ってしまうのでその間はまったく関係ないのですが。

        

そして何箇所かお経をあげたりお参りしている時に、なんと数珠を落としちゃった。

「おいおい、本番ではやめてくれよ〜」
皆に言われてかっこ悪い私。

気を取り直してお参り再開。

赤いお堂を右手に見ながら先生の解説 。
「ここはお坊さんは通ってはいけないところなんだよ。
 ここはね、江戸時代に真言●川流の書物を焼いた場所だからね。」

驚愕の事実!

でも周りには立て札も無ければ注意書きも無い。知らない人は通っちゃうよ。
少なくとも私はやっちゃう。

そのあと先生が
「私は通っちゃったからこんなになっちゃったのか分かりませんが(笑)」

通っちゃったんですか!聞けないけど。

というわけで、伽藍参拝は無事終了。と思いきや

「誰か数珠落としてますよ」

はっ!無い!

みんなの視線が突き刺さる☆
「大丈夫かい明日(笑)本番ではやめてくれよ〜」

俺はどうかしている。油断大敵だ(なにが?)
今度こそ終了。一抹の不安はあるものの、気がつかない振りをする私。

本当は受戒をしたかったようですが、時間の関係で今日は中止。

プレッシャー

という訳でご飯の時間。さすが豪華な食事が並びます。

ご飯の前に運ばれてきたのがビールと日本酒。
通称「あわ般若」と「般若湯」。
俗人として呑む最後のお酒。お酒注いだり注がれたりといういつもの光景が☆

一頻りアルコールが入ったところでお食事を。

今回の得度、私が一番まんだらや通いが古いのと、まんだらやの四度加行終わっている珍しい人なので、
トップバッターになっています。

何度か言われているのですが、
「一番最初の人が間違えると、後の人がみんなその通りにやるからね(笑)。落語みたいにならないように」

意外とプレッシャーに弱い私。そして極度の上がり症☆
なんだか俄かに緊張してきた私。

やばいな・・・いつも通りやれば・・・とは思うけどなかなかねぇ・・・。

食事を終えて、部屋に戻り、明日の準備をして早めに就寝しました。

得度当日

朝5時に起きて支度をし、朝の勤行に参加。

寒い。でもお経あげている間は忘れていられる。

照明は暗く、寒くてお香の香りがする本堂は、独特の雰囲気だ。
焼香して読経に戻り朝勤終了。

内陣のご本尊の地蔵菩薩をお参りする。
読経中は気がつかなかったが足がしびれてフラフラです。
話には聞いていましたが綺麗なお地蔵様でした。

得度の時だけでも上がり症が治りますように・・・。

このお地蔵さん拝めただけでも早起きの価値あり。

このあと朝食。

気持ちの上では大丈夫だと思っていましたが、やはり体がご飯を受け付けない。
緊張しているのだ。
いくつになっても上がり症は治らないな。

このあと丁子湯に入って身を清め、いよいよ得度式に向かいます。

得度式その1

得度の衣装に着替えます。
白襦袢に白衣、白足袋。まさに死装束。
得度とは一遍死んで生まれ変わる儀式なのだそうです。

全員が着替えて順番に廊下に並ぶ。
お寺の方に得度の説明を受ける。

どういう流れか忘れましたが、なぜか密教のお坊さんは法衣をつけていない時は下ネタOKというお話に☆
なんでも密教のお坊さんは清濁併せ持つ器を持たなければならない、というお話を得度直前に伺う。

さて本堂へ到着。

二列に並んで正座合掌して准胝観音の仏画の前に並ぶ。
全員で准胝観音のご真言を唱和。

「オン シャレイ ソレイ ソンデイ ソワカ」

この観音さま、あまり御名前を聞かない観音さまですが、インターネットで調べると
「准胝の修法をなす者は、清穢及び出家・在家を問わず飲酒肉食し、かつ妻子あるも仏道修行を達成するという」
なんて書いてあります。

六道では人間界を救うお方で、人を悟りに導いて、数限りない仏を誕生させる、
宇宙の神性の擬人化であることを示すのだそうです。

ありがたい観音さまですね。

”飲酒肉食の者でも仏道を達する”とありますが、
別に今回の10人を見てこの観音さまを選んだわけではありません。念のため。
どなたが得度する時でもこのこの観音さまですからご安心を☆

なるべく本番で正座が保てるように、足の負担がかからないように体重移動をして
ご真言をお唱えするんですが・・・それにしても永い・・・。

30分弱ほどご真言をお唱えしてやっと終了。

いよいよ得度式本番を迎えます。

得度式その2

若干しびれた足を引きずり、衝立で仕切られた本堂の得度の儀式をする部屋に移動。
今回得度式をしていただく加藤阿闍梨さま登場。
国王、両親、氏神に三礼。

        

今回は10人の大所帯、式の前に
「なるべく皆がそろうように、前の人は隣を見て、後ろの人は前と隣を見ながら
 なるべく皆がそろうように三礼してください」

私は一番なので右隣だけ見ながらやることに。
今更ながら一番のプレッシャーがのしかかる。

予想通り?一番最初の三礼の手順を間違えた。
やっちまった・・・テンションだだ下がり・・・。

何とか三礼×三回終了。

ここから傳授の儀式に突入。
一人ひとり加藤阿闍梨の前に出てイニシエーションを受ける。

金剛合掌を加藤阿闍梨に突き出して頭を下げながら、剃刀を頭に当てられて裏に回る。
左右と真ん中の髪を切っていただき、黒衣に着替えて席に戻り、今度は如法衣を受け取る。
如法衣をつけて全員揃ってから数珠を授かります。

         

ここから私は数珠を落とさないように金剛合掌を解かないモードに。
昨日の二の舞だけは避けたいので。

そして沙弥十戒を授けていただき、証明書を頂いて無事得度終了いたしました。

         

  ”僧名 紫雲”

いろいろありましたが、念願の得度式が終わりました。
かなり頼りない坊さんですが、これを持ちまして私も弘法大師のお弟子の末席に加えていただいたわけです。

1200年の傳統に身をおくこと、感激ですね。
ありがたいことです。

         

得度を終えて

小林先生始め一緒に得度した方々、後見人の龍樹さん、加藤阿闍梨はじめ常喜院の方々、
皆さまのおかげで非常に楽しく、そして濃い2日間を過ごすことが出来ました。

この場をお借りしまして御礼申し上げます。

現在は普通の生活の戻っておりますが、いつか高野山で修行ができますよう願掛けし、
出来ることからはじめております。

小さい頃に夢見た僧侶の夢、あの頃の自分がもし今の自分を見たならどんな風に思うでしょう。

気になるところです。

 紫雲

(写真・小林宗峰)