秩父巡礼 第2回 2008年5月8日

「念彼観音力」
〜彼の観音の力を念ずれば

一度でも「観音経」を唱えたことがあれば、
このフレーズが深く印象に残ることでしょう。

たとえば

 或被悪人逐 堕落金剛山 念彼観音力 不能損一毛

 『或は、悪人に追われ金剛山から落とされようという時であっても、
  彼の観音の力を念ずれば、毛の一本にすら害を与えることはできない…』

 或遭王難苦 臨刑欲寿終 念彼観音力 刀尋段段壊

 『彼の観音の力を念ずれば、その処刑の刀がバラバラに折れるであろう…』

と、このような感じで「観音さまによる救済の功徳」が延々と説かれているのが、
法華経第二十五品にあたる「観音経」です。

「全然リアルじゃない」
「ファンタジーの世界だな」

…確かに理屈で考えれば、そうでしょう。
ボクも実際、そう思ってます(笑)。

でも、日々唱える。
また、今回のように深い山々の古寺という「場」で唱える。

そういう経験をする中でしか得ることができない、何かがあります。


「ああ、しんどい……」
朝5時に起きて、せっせと用意をする。
この日のために、この前週に3日間の半断食をしていた。
少しでもクリアな状態で、祈りを捧げようと思ったからだ。

…というとカッコいいけれど視\タはそれだけでなく、これまで仕事柄
積み重なった疲労を、内側から抜いていこうという意図もあったり(笑)。

ともかく、身体は軽くなった。

今日は、2か月連続敢行の「秩父巡礼ツアー」。
前回(4月)とは打って変わって、晴れ渡った空を見ながらまんだらやへと向かう。

さて今回は、どんな巡礼になることやら…。

ボクとほぼ同時刻にR子さんが到着。
しかし、ほかには誰もいない……これはもしや………。

「今日は、全員で4人だよ」

あ、やっぱり……。

ほどなく、Kさんがやってきた。
4月は12人の大所帯。
それとはまた違い、今回は車1台での、こぢんまりとした秩父となった。

晴天という天候的好条件。
そこに車1台だけという身軽さという条件。

この2つが組合わさってか、今回訪れた札所は12か所。

2番 真福寺
6番 卜雲寺
7番 法長寺
8番 西善寺
9番 明智寺
10番 大慈寺
11番 常楽寺
12番 野坂寺
13番 慈眼寺
18番 神門寺
26番 円融寺
27番 大淵寺

(実際に訪れた順序は、バラバラです)

観音霊場(札所)は日本国中に数多くあり、代表的なものとして、
西国33観音、坂東33観音と秩父34観音をあわせて日本百番観音と称するそうです。

33という数は、観音様が33のお姿に変化し衆上を救うことを意味しており、
また無数・無辺にも通じているところからきているらしい。

秩父の札所は百観音に数えるため34観音とされたという経緯だそうです。
(なんだか強引だな〜)


山道を車で上がり、まずは2番札所。
なるほど、前回行かなかった理由がわかった。

道が狭くて、しかもクネクネ。
そりゃあ、雨の中なら避けたいでしょう。

しかし今日は晴天。
「真福寺」の周囲は、山々のさわやかな風が吹いていた。
そこここに、いろいろなお地蔵さまが鎮座されている。

   

本尊、聖観世音菩薩に優しくお迎えしていただく。

いや〜、なんともいえず、気持ちがいい。

ここでは観音経とともに般若心経も唱えました。
この2つのお経、読経しながらいつも思うのだが、そのエネルギーの
ちがいが明瞭だな〜と(あくまでもボクの感じ)。

般若心経は、グッと中心に集まるというか、身体の中心が上下に透るような感じがするし、
観音経はそうではなく、胸のチャクラが開くのか、明るく外部に広がっていくような感じがする。

この2つが日常経典のなかにセットされているのも、言霊の響きから得られる
パワーの質のちがいも考慮されてのことだろう。

智慧と慈悲、そこにハラで読み上げることで力が増す。


今回訪れた12か所の札所を、番号順にご紹介します。

 6番 卜雲寺
 本尊 聖観世音菩薩
 ここの六地蔵は、秩父の象徴的な山である武甲山を背負って
 いるかのように立っています。

 7番 法長寺
 本尊 十一面観世音菩薩
 こちらの本堂は、秩父札所中最大規模だそうです。
 設計は平賀源内ともいわれているそうですが……?

 8番 西善寺
 本尊 十一面観世音菩薩
 ここには、天然記念物のコミネモミジの巨木があります。
 高さ9メートル、南北に16メートル、東西に18メートルという横枝があり、
 樹齢500年の威厳を感じさせつつ、どこか優しい。

海抜1336メートル、武甲山はこれらの寺からはよく見える。
武光山とも昔は書かれ、日本武尊が東征の時この山に登り、武具甲冑をこの岩蔵に納めて
戦勝を祈願したことからその名が生まれたとされているようです。

その威厳ある姿は、そういう言い伝えも真実かと思わせる何かがある。

 9番 明智寺
 本尊 如意輪観世音菩薩
 右手の掌で頬をおさえる思惟相は、福徳知恵の観世音といわれていて、
 安産や子育てに霊験があるそう。
 なるほど。

 10番 大慈寺
 本尊 聖観世音菩薩
 ここの観音様は「おびんつるさま」といわれ、病を治すということで有名(らしい)。

 11番 常楽寺
 本尊 十一面観世音菩薩
 1878年の秩父大火で、かつてあったはずの観音堂、仁王門、庫裏などが焼失したらしい。

1か所ごとに、「観音経」を読んでいる時のバイブレーションがちがう。
「場」の醸し出すエネルギーのちがい、もあるが……。

 12番 野坂寺
 本尊 聖観世音菩薩
 山門正面にあずかり観音が3体。
 右に怒りを、左に煩い悩みを、正面には病い痛みを「あずかる」観音さまがいる。
 ここの地蔵さまは……かわいい♪♪
 花も、藤やらがキレイでした。

 13番 慈眼寺
 本尊 聖観世音菩薩
 眼病にご利益があるといわれているお寺。
 市街地にあるためか、参拝者の方もひときわ多い。

 18番 神門寺
 本尊 聖観世音菩薩
 ここは、この日最後に訪れたお寺。
 この地には神社がもとはあったが荒廃し、「お寺を建てなさい」とのお告げから
 建立したところ繁栄したらしい。
 本堂右手には、不動尊が。

 26番 円融寺 
 本尊 聖観世音菩薩
 本堂には、うっすらと寂しさが漂う……。
 観音堂は離れたところにあるようだ……(つまり、行ってない)。

 27番 大淵寺
 本尊 聖観世音菩薩
 木々に囲まれ、ゆるやかな空気が流れている。
 33か月長生きするという「延命水」が湧き出していた。
 ここは山の上に大きな観音様がおられます。



いくつかのお寺では、小さなお釈迦様が天を指差していて、
そこに甘茶をかける用意がされていました。

そう、「花祭り」。

本来は4月8日なのですが、ここ秩父では
「4月じゃ寒いから」(お寺の方 談)
1か月遅れて開催しているそうです。

天を指差すお釈迦様の像は、お釈迦様降誕時、七歩歩いて右手で天を、左手で地を指差し
「天上天下唯我独尊」
言ったという逸話からのもの。

また、その像に甘茶をかけるのは、9つの龍が天から清浄の水を注ぎ産湯を使わせたという
伝説に由来するそうです。

このような日に秩父巡礼……。
奇縁とも思えてしまう。


そして、今日は本来の巡礼とはちがったコースも。

陽気もよく、ちょうど秩父の大きな公園、「羊山公園」では芝桜が見ごろのこの時期。
巡礼の合間をぬって、そそくさとみんなで行ってみた。

いや〜、美しかったな〜。

武甲山を背景にして、8品種約40万株にものぼる白やピンクの花々が、
訪れる人々を出迎えてくれていた。

その敷地面積は16500平方メートルにもなるらしい。

     

今回、都合12回ほど「観音経」を読んだことになる。

車中にて

「後半、なんだか気が変わった感じがしない?」
「そういえば……」
「いや〜、疲れちゃってさ〜」
「…………(笑)」

と、いうような堅苦しさの微塵もないようなスタンスで、今回の巡礼ツアーも
終わった。


「巡礼」という行為。
「祈る」という行為。

「なぜ、そんなことをするのか?」
「そんなことをして、何の意味があるのか?」

ただその時々の損得や利益不利益を基準にすれば、1日をそのような
行動に費やすことは、ムダに等しいのかもしれない。

ついこの間までボクもそれに近い意識をもっていたから、よくわかります。

でも、いい悪い、正しい間違いというような価値基準でなく、
「まずは、やってみよう」という純粋な興味。

そうすると、感じられる世界がちがってきたり、するかもしれません。

ファンタジーのような、「観音経」の世界。
でもそれが、幾世紀も超えて唱え続けられているその理由。

「彼の観音の力を念ずれば〜」
と、読み上げていくごとに、その理由が体感できるようになってくる。

今回ご同行させていただいたみなさま、本当にありがとうございました。

またご同行できますことを、心より祈りつつ……。

田村 記