クリシュナムルティ

星の教団の解散演説
 
 
神智学協会から「世界教師」として目された34歳の青年は、真の世界教師として羽ばたこうとしていた。
それは神秘教団に育てられた男が、神秘を粉砕する瞬間であった。

クリシュナムルティは星の教団の解散を宣言した。

1929年のオーメンキャンプは緊張と期待の空気の中で開かれた。
アーニー・べサント夫人と3000人以上の星の教団員を前にして、Kは星の教団の解散演説をした。

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〈真理〉は途なき大地であり、いかなる方途、いかなる宗教、いかなる宗派によっても、近づくことのできないものなのです。
それが私の見解であり、私はこの見解を絶対的に、かつ無条件に固守します。

無限でいかなる条件付けも受けず、どんな途によっても接近することのできない〈真理〉は、組織化し得ないものです。
また、特定の途をたどるように、人々を導いたり、強制したりするような、どんな組織体も形成されてはならないのです。

もしあなた方が、最初にこのことを理解されるなら、一つの信念を組織化することがいかに不可能であるかということが、お分かりいただけるでしょう。

信念というものは純粋に個人的なものであり、組織化することはできず、また、してはならないものです。

もしそうするなら、それは生命のない結晶体になってしまいます。それは他人に押し付けずにはすまない教義や宗派、宗教になるのです。

これこそ、世界中の誰もがしようと試みているものなのです。


〈真理〉は狭められ、おとしめられて、無力な者たち、かりそめにも不満を感じるものたちの慰み物にされてしまいます。

〈真理〉を引き降ろすことはできません。むしろ一人一人がそこへ上がる努力をしなければならないのです。

あなたがたは、山頂を谷底へ運ぶことはできないのです。

(中略)

これ(教団の解散)は何も大それた行為ではありません。
なぜなら私は信奉者を欲してはいないからです。本気でそういっているのです。

誰かに付き従ったとたん、あなたがたは〈真理〉に従うことをやめてしまうのです。
私は、私のいうことにあなた方が注意を払うかどうかには関心がありません。

私はこの世界で、あることをやりたいと思っており、一心不乱にそれをするつもりです。
私は唯一つの根本的なことにのみ関心があります。

それは人を自由にすることです。

私は人をあらゆる獄舎、あらゆる恐怖から解き放ちたいと思っています。
宗教や新たな宗派を創始したくもなければ、新たな理論や新たな哲学を確立したいとも思っていません。


        ************** 中略 **************


・・・私は自由であり、どんな条件にも影響を受けず、全体であり、部分的でも相対的でもない、永遠である〈真理〉全体なのです。

私を理解してくれ、自由で私に追従することなく、私を使って宗教や宗派となる獄舎を創り出すことのないような、そのような人々を求めます。


        ************** 中略 **************


誰も外側から自由にしてくれません。

組織的な礼拝も、大義のために自身を犠牲にすることも、あなた方を自由にすることはできません。
組織の一員になっても、仕事に身を投じても、あなたがたは自由になれないのです。

あなたがたは文字を打つためにタイプライターを使いますが、それを祭壇に置いて崇めたりはしません。
しかし組織が主要な関心事になったときに、あなた方がやっているのは、そういうことなのです。

「メンバーの数はどのくらいですか?」といつも聞かれます。
「信者は何人ですか?その数によって、あなたが言われていることが真実か虚偽かを判断しましょう」

何人いるのか私は知りません。そんなことには関心がないのです。
自由になった人が一人でもいさえすれば、それで充分です。 


        ************** 中略 **************


私は二年間このことをゆっくり、注意深く、忍耐強く考え続けてきました。
そしていま私は、たまたま自分がその教団長なので、この教団を解散いたします。

別の団体を作り、誰か他の人に期待することは可能です。
私はそれと関係したくはありませんし、新しい獄舎を作り、その獄舎を飾り立てることにも関心はありません。

私の関心事は唯一つ、人間を絶対的に、無条件に解放するということです。


                                        『クリシュナムルティ・目覚めの時代』(メアリー・ルティエンス著)より抜粋





                         <密教タロット>

           <14番:節制>


サイの角のようにただ一人歩め (釈迦)
                  <15番:悪魔>


組織化した教えは生命のない結晶体になって、
人に押し付けずにはいられなくなるのです。(クリシュナムルティ)
                                <数のない愚者>


獄舎から出た愚者は、〈真理〉という途なき大地を歩くのです。(クリシュナムルティ)




                     〈ラコタ族の教え〉

         私の後を歩くな、私が正しい途を歩くとは限らない。

         私の前を歩くな、私が従うとは限らない。

         私と共に歩め、私たちは一つなのだから。