宗教象徴学
考えの前に



人間は言葉で考えているのではなく、言葉が出る以前から考えていることを、言葉にするだけなのである。

この非言語的原始概念で考えることが、どういうことかを考えようとするなら
言葉で考えるのではなく、
それ以前のイメージとイメージのこねくり回しから生まれる
「概念以前のモヤモヤ」のさまざまなビジュアルな要素を素材として、

そこから生まれてくる抽象的なイメージに対して、図像解釈学的(宗教象徴学的)理解が必要となるのです。
                                                                立花隆
言葉ではない情報=四曼

空海はこのことに気づき、現実の世界には四つのマンダラ(心的世界)があると解きました。

一つは言語概念世界です。
二つ目が形態概念世界です。
そして最後に、現世を背後で支える神秘世界です。

これらが統合して現実世界になります。

言葉の世界とは耳からの情報と眼からの文字情報世界です。
形態概念世界とは眼耳鼻触覚と意識の情報世界です。

五感の無意識に対する情報


眼の情報


真言宗の儀式には目隠しをすることがあります。
チベットのカーラチャクラ・イニシエーションでも目隠しを儀式化していました。

密教の儀式ではなぜ目隠しをさせられるのでしょう。

私たちはつい目の情報に左右され、他の感覚器官を使おうとしなくなりがちです。
情報を眼から取らないようにするために、目隠しをするのではないでしょうか?

また本堂を薄暗く造って、眼に見えないものを見ようとするのではないでしょうか?

耳の情報


密教の儀式ではなぜうるさいくらいに、太鼓を叩いたり、鈴を鳴らしたりするのでしょう。

耳の情報を大きな音で遮断し続けると、そのうちに音が聞こえなります。
40分以上太鼓を叩いて護摩を修しているうちに、静寂が訪れ、
その後何処からともなく話し声が聞こえてきたことがあります。

芭蕉が「静けさや 岩に染み入る 蝉の声」の情景と同じ感覚です。

外部の音はうるさいのに、意識が内部の音をとらえるのです。

鼻の情報


真言密教では香りを多く使います。伽羅の香り、塗香の香り、抹香の香り、
原初的な嗅覚は無意識を揺り動かすのです。

現代ではアロマテラピーとして活用されています。

原始的な感覚による変容ほど、意識の変容は大きいのです。

触覚の情報


職人芸は眼では測れない、触感から生じます。
コンマ何ミリの金型を、職人芸は手触りで覚えるのです。
鍼灸師の針を打つ場所も感覚の賜物でしょう。

気功などの修行の結果、気の感覚が鋭くなると、
皮膚の呼吸の感覚が分かるようになります。

すると手をかざすことで、触覚を超えた気の感覚が身に付くようになります。
物質の気配が分かるようになるのです。

意識の情報


意識(無意識)は言語を司る左脳と、直感を司る(神仏とつながっている)右脳が影響しています。
意味不明なマントラの熱心な読誦は、左脳に刷り込まれた論理的思考法を排除します。

また呼吸に意識を置いて三昧の境地に至る瞑想法も、
意識のフィルターをはずし直接無意識(虚空・光)と対面する最高の方法です。