武蔵御嶽神社・峰中修行体験記

平成15年6月7・8日、東京都の奥多摩にある御嶽神社で峰中修行が開かれました。
「まんだらや」では共に密教を学んでいる友人たち、7人と共にこの修行を体験しました。

伝統あるこのような修行が、1泊2日、1万円で受けられるのです。
これも神社の皆様方が、経済中心に発展してきた日本の乱れを危惧する志の現われだと思いました。

武蔵御嶽神社は秩父多摩国立公園の入り口にあり、
神社からは新宿副都心の夜景が眺められる標高929m御岳山の頂上付近にあります。

JR御嶽駅からバスで5分、ケーブルに乗り継いで頂上駅に上がると
土産物屋や宿坊が参道を取り囲むように建ち並んでいます。

今回の宿坊は神社街の中心にある片柳荘です。
午後2時の集合後、自己紹介などの型通りの進行で3時には神社に参拝しました。

300段余りの階段を登り積め、本殿に上がり玉串奉奠(たまぐしほうてん)の儀式を行い
徐々に緊張感が高まってきます。
宿坊に戻り渡された鉢巻と褌をつけて滝に向けて出発です。

幅の広い道を高低差なしで30分歩くと、ハイキング道の下にある綾広の滝に着きました。
女性は近くの避難小屋で白衣に着替えをしました。

綾広の滝は右手をそそり立つ岩壁で覆われ、左手は開けた山の斜面です。
下から見上げると10mほどの滝の流れの上は、新緑の木々を通して透過する日の光が鮮やかな明るい滝場です。

    

滝壷は60cmほどで腿までの高さです。
垂直ではなく軽く傾斜しているので、頭頂で水を受けるためには後ろにそる感じになります。

振魂(ふりたま)をしながら、「祓戸大神(はらえどのおおかみ)」を唱えつつ説明を受けます。
そして鳥船(とりふね)が始まります。



鳥船-----神代にあったという船のこと。
     古代日本人の海上における雄飛を忍ぶとともに、
     心身を強化させる働きがある。

一段。 左足を斜めに踏み出し、両手を握って(親指を入れて)「イエーッ」と言いつつ突き出し、
次に両手を「エーイッ」と言いつつ胸のあたりに引き寄せる。

二段。 右足を斜め前に踏み出し、同様に「エイッ」「ホッ」と唱える。
三段。 再び左足を斜め前に踏み出し、同様に「エッ」「サッ」と唱える。

この間に和歌「朝夕に神のみ前に禊ぎして すめらが御世(みよ)に仕えまつらん」を三回唱えます。

一段から三段までを各1〜2分ほど行いますと、体が火照ってきます。


おたけび 雄健-----鳥船により奮い起こした気力や霊力の清明感を、
         神の御名を叫ぶことで、心を晴れ渡らせること。
         厳然とした姿勢で、神々しいを持つものとしての自覚の姿を現すこと。

 生魂  いくたま    高御産巣日神=創造・発展・完成の神
 足魂  たるたま    足産巣日神=不足を豊かに充実させる神
 玉留魂 たまたまるたま 玉留魂神=遊離した魂を再び静め、死者の魂を復帰させる神

以上の三人の神の名を、出来るだけ大声で三回唱えます。
その後、国常立命(くにとこたちのみこと)と自分が宇宙に常に立っているようになったつもりで唱えます。


おころび 雄詰-----大声を発することで、気合を持って、
          周囲環境にある災害・凶事を引き起こす禍津神(まがつかみ)、
          いわゆる悪霊・物の怪を調伏し、さらにそれを最後に復活させ神格化させる方法

左手を腰に当てたまま右手は親指、薬指、小指を曲げ、人差し指、中指を伸ばし
(神道ではこれを天沼矛印--あめのぬぼこいん--という)
その印を眉間のあたりに構え左足を踏み出すと同時に「イエーィ」という気合もろともに
右手を左斜め下に切り下ろし、再び左足を戻し同じ動作を三回します。


いぶき 気吹(伊吹)

手の平を上に向け、両手を広げて差し上げると同時にを深く吸い、
頭上で手を組み、組んだ手を静かに息を吐きながら丹田に向けて下げ、横隔膜を下げ一瞬息を止める。

神気、大気を体内に吸いこみ、自己の体内を浄化し、自己の魂の鎮魂を図る。
これも三回行う。


この一連の動作のあとに滝に入ります。
先ほどの動作で気力が充実している(笑)?とは言うものの・・・・
6月とはいえ滝の水は冷たく、順番を待つために足を浸していると、浅い滝壷にもかかわらず緊張に身が奮えます。

順番が来て岩によりかかるように腰を岩に当てます。
身体をのけぞるようにすると頭頂から全身にかけて水が降り注ぎます。
    

「祓戸大神(はらえどのおおかみ)・祓戸大神・祓戸大神」と振魂(ふりたま)をしながら大声で唱えようとするのですが、
緊張で口がこわばって声が出せません。10秒の時間がとても長く感じました。
先達の方の「イエーィ」の声で、こちらも合図に「イエーィ」と叫び一回目の滝は終了です。

15人の方が次々にしますので、ぬれた身体で列の後ろにつき、振魂を続けます。
二回目になってくるとだいぶ落ち着き動作も憶えてきました。
足元が岩場なので、裸足では足の裏が痛く恐る恐る歩きました。

滝に入ってからも大声で唱えながらも周りを見る余裕が出てきました。三回目は5秒間です。
終わって滝壷から出ると寒さで震えが来ます。

先達が鳥船を始めました。上半身を動かし舟をこぐ動作は身体を火照らせます。
全員が終了すると大祓詞(おおはらいのことば)を唱え、二拝、二拍手、一拝の礼のあと、
鳥船、雄健、雄詰、気吹を続け拝礼後、手締め(一本締め)で終了しました。


ふりたま 振魂------滝を待つ最中に行っていた振魂とは、
          神様から霊威・御稜威(みいず)が降り注がれることを意味します。
          又は自分自身の魂の力を奮い起こすの意味もあります。
          振魂をすると身体と魂に調和を与え、気力は満ち心晴れやかにすることが出来ます。

1./ 手の中に少しの空間を作るように両手を合わせ、下腹部に構える。

2/ 組んだ手を上下に振動させる。手首を使わずひじ、肩を使って上下させる。

3/ 上下運動の中心は丹田。手が上がり過ぎないように注意する。

4/ その運動を中止し、全身の緊張を開放させる。1〜4を繰り返す。


禊ぎが終了し宿坊に帰ると、地元で取れた山菜や味噌田楽、おかゆご飯の健康的でおいしい夕食が待っていました。
参加者一同、先ほどの厳しい顔も「うそ」のように和やかな夕食です。
食後30分はタバコが許可されますのでヘビースモーカーにとっては最高の憩いの場でしょう。

食後の団欒もそこそこに階段を登り神社に上がりました。
日はとっぷりと暮れ、振りかえると東京の夜景が海のように広がっています。

滝行を成し遂げた達成感で、皆ウキウキしています。

神楽殿より入り、本殿に向いました。
本殿の床に座り大祓行法です。大祓詞を5回大声をあげて読み上げます。

ところが下は硬い本殿の床。正座しなれていない友人は足が痛くなり、つい崩してしまい先達に注意を受けたそうです。
20分の正座も現代人には良い修行になるようです。
宿坊に帰る道すがら「むささび」の声に一同、山奥にいることを実感しました。

翌日は5時半起床で再び滝行に挑戦です。

朝の水の冷たさも、昨日の経験があるので恐怖感は薄らいでいます。
動作も憶え始めていますので落ち着いてこなせました。

    

宿に戻って朝食後、山駆けに挑戦です。

山駆けといっても駆け登るわけではなく一列になり集団登山です。
1257mの大岳山まで登り2時間半、下り2時間の登山です。
しかし修行ですので途中の休憩時間以外は会話禁止です。

黙々と歩くことに集中すると昨日の滝行や大祓の思い出が浮かんできます。
頂上は登山者であふれ、都会の雑踏のようにうるさく感じるのは、
沈黙の行をして内側を見つづけていたせいなのでしょうか。

帰路、神社に到着後、本殿にて玉串奉奠(たまぐしほうてん)を再び行い、
神様に修行の無事を感謝し宿坊に戻りました。

参加者一同疲れてはいるものの笑顔、笑顔の状態です。

解散後ケーブル駅に戻る途中メンバーの一人(女性)から
「みんな冷たいの!滝に打たれてつらいので同情の目線が欲しいのに、
 誰も私のことなんか見てくれていないんだから!!」

「そうなんです。誰も他人のことなんかに構っていられないくらい必死だったので〜す!!」

一同大笑いで今回の修行を終了しました。

御嶽の駅に下りて食べた蕎麦とビールのおいしかったこと。
心なしか森の緑も鮮やかに見えるようです。


この修行には後日談があります。

峰中修行に参加した、百名山を目指している山仲間(小学校の校長)のS氏は本殿の氣を感じ、
手の平がピリピリすると言っていました。
翌週、修験の山・月山に登山したら同じように氣の感覚が押し寄せてきたそうです。

都会に戻ってきてからも、深い呼吸とともに手の平が熱くなる氣の感覚が残っていて、
宗教性には無縁な彼が「小林、俺、目覚めちゃったみたいだよ〜。」と電話してきました。

頭頂から流水を浴びる体験は、頭頂のチャクラを開かせ、神仏とつながる役割をしたのでしょう。