|
新宿発の奥多摩五号の電車に集まった面々は9人。
フランス人女性「オーリー」とアメリカ人男性「ロバート」が加わり国際的だ。
神社の修行は「まんだらや」の年中行事だが、今回は初めての人が多い。
おしゃべりで夢中になっているうちに、車窓の風景は家並みの続く都会から、緑の多い渓谷を走るようになる。
ぱらつく雨の中、駅前からのバスに乗り、ケーブルに乗り継ぎ上の食堂に着く。
一同が集まって、自己紹介・・・外人の二人も日本語が堪能なので、皆安心する。

歩いて10分、宿坊の「山香荘」は骨董品・民芸品のカフェのような趣のある宿だ。
男女別に、同じ部屋をあてがわれ修学旅行のような気分になっている。
遅れてきたメンバーもそろい、10人になる。
一日目の修行は滝で始まった。
30数人の男女が滝の前に一列に並び、次々と入っていく。
ふと見ると「ロバート」が辮髪(べんぱつ)をしているのに気づく。
髪の一部を編んでオサゲのように伸ばしているのだ。
ぽっちゃりとした大柄の身体と辮髪。まるで「不動明王」のようだ。
日本人であるお母さんの無意識が移ってしまったのか?
本人は「不動明王」など知らないし、*辮髪の意味も知らないと言う。
フランス人女性の「オーリー」も必死の形相で滝に入っている。
彼女は毎週火曜日の「冥想の会」に参加しているが、前世が日本人だったと「自分探しの旅」を続けているのだ。
滝に入る前に、雄たけび、雄ころび、振り魂などの行法を行い、大声を上げる。
日々の生活とはかけ離れた、時を過ごす。
滝を終えると、神社に戻り「大祓いの詞」を読上げる。
一回読むと4分以上かかる。これを正座をしたまま6回読上げるのだ。
「ロバート」は剣道をしたことがあるので「30分ぐらいの正座はOK!」と自慢している。
二人は「リーダー」として名乗り出たので、高天原(たかまがはら)に神留(かむづま)ります・・・。
・・・此く宣らば(かくのらば)・・・と大声を上げて唱え、日本人が続いて唱和した。
緊張の24分が経った。
終了と共に「ドタッ!」オーリーが横座りになった。
「イ・タ・タ・タ」しびれた足が戻らない。
3分もマッサージをしてから、やっと立ち上がれるようになったのだ。
神社からの急な階段を下り、宿に戻ると夕食が待っていた。
皆おなかがペコペコだ。挨拶の言葉もそこそこに食事が始まる。
食事も修行の一つ。
真剣に食べていると目の前の「オーリー」がゆっくり食べている。
みなが終わり一番遅くまで食事をしていた。
みな正座の足も痛いので、早く終わりたいのだが・・・・!!

翌朝は早朝に滝に向かう。
朝の滝は霊気が一杯だ。
行法も慣れてきてスムーズに進む。
滝の上にある「金剛蔵王権現(こんごうざおうごんげん)」も朝の光で輝いている。
宿坊に戻って、食事の後、山駆けになる。奥の院を目指すのだ。
奥の院は三角錐のピラミッド状の山。
氣やレイキや神の気配は三角形の上に降りることを、昔の人々は知っていたのだ。
1時間後には奥の院で冥想、その後大岳山に向かう。
また「オーリー」が足の痛みを訴える。
今度は左ひざが痛いという。テーピングをして足を保護する。
普段歩いていないと、この修業体験は辛いものになるのかもしれない。
山駆けの修行を終え神社に戻る。
神社の由来を説明され、修了証書をもらうころには心も緩み、みなニコニコ顔になっている。
山を降り、バス停そばの「そばや」で好例の食事会。
私はこの一時が楽しくて、一日だけビールを抜いたのだ!!
我慢をした後の、開放感はなんとも言えない喜びだ。
話に夢中になっているうちに、外は真っ暗になっていた。
このころの電車は、30分に一本。あわててネオンの輝く都会へ戻る電車に飛び乗った。
また都会の価値観で染まったら、禊に来て見よう。
新宿駅で同じ釜の飯を食べた仲間たちは、三々五々、個人の生活に戻って行った。
また、汚れがたまるころ・・会えることだろう。
*辮髪(べんぱつ)
アジア北方民族の髪型。
満州の清朝が中国本土に侵略し、漢民族にこの髪形を押し付けた。
不動明王の髪型は、強い男のイメージの象徴として作られた。
|
|