映画マトリックスと胎蔵界
「映画マトリックスは密教映画だ!!」といったら皆さんは驚くでしょうか。
でも真言宗の胎蔵界、金剛界は英語でマトリックス&ダイヤモンドというのです。

    マトリックスは多くの基盤が並んでいる配列システムの世界。
    ダイヤモンドとは光り輝く心の世界(金剛不壊)。

    物質世界と精神世界なのです。

    ここでは主人公のネオと先達役のモーフィアスの会話からこの映画の意味を探ってみましょう。
    ネオ役のキアヌ・リーブスが映画リトル・ブッダで釈迦の役を演じたのは偶然なのでしょうか?


世界とは何か?


マトリックス1の映画で、私たちは仮想現実に住んでいて、コンピューターに操られています。
子供の時にコードを繋げられるとその仮想現実の世界で生活し、熱を発生します。
その生命エネルギーがコンピューターにとって必要なのです。
私たちは感覚器官から伝わってきた情報を真実と信じ、仮想現実の中で何でも出来るとは信じていません。


モーフィアスは言います。
『何が現実か? 五感が感じるものが現実? 現実は脳による電気信号に過ぎない。』

選ばれた主人公ネオは、モーフィアスに会って話を聞きます。
なぜここに来たか。『目覚めたいからだ。』
その理由は『何かが間違っていると感じたから。』

密教では私たちの心には、情報の覆いがかかっていると言います。
その覆いを剥ぐことが「目覚める」ことであり、目覚めた人のことを覚者(Buddha)と呼びます。

般若心経では無・眼耳鼻舌身意と感覚器官なんて無いんだと称えます。
また無・色声香味触法と感覚対象さえ無いんだと称えます。

意識が現実世界を創っていることを知るために、密教(修験道)では滝行をします。
私たちは意識の力により感覚器官の働きを、一時停止させることも出来るのです。
意識の力で脳による電気信号を遮断することが出来るのです。

インストールと虚空蔵求聞持法

主人公のネオは各種の格闘技を、インストールすることによって覚えていきます。
密教では情報は外部にあるものではなく、自分の記憶の中に内在していると考えています。
多くの他者の魂が体験した情報は、普遍的集合無意識に収納されています。

自己の魂(アートマン)は集合無意識の魂(ブラフマン)であり、ここから情報が得られるのです。
空海はこのようにして居ながらにして虚空蔵(アカシック・レコード)に入り、
抜群の情報量を得ることが出来ました。
密教ではこのように瞑想をして覚りを得ることを、一切智に入るといいます。

ネオとモーリアスが預言者のおばさんに会いに行くと「己自身を知れ」との暗示を受けます。
自分とは肉体の自分ではなく、個の意識(アートマン)の自分だけでなく、
集合意識(ブラフマン)としての自分であるということに気づくことが重要です。
人類の一員としての自分の重要性に気づくのです。

あなたの考えていることは、人類の集合無意識が考えていることなのです。
これを華厳経では「一即多、多即一」といいます。

真実を見るとは?


マトリックスの場面では1999年なのに、現実は2199年。
地球は核戦争の後のような破壊された様相を示しています。
この現実を見たネオがその悲惨さを受け入れられなくなり、吐き気を催します。

そしてベッドに寝かせられたネオに、モーフィアスが話しかけます。
『ある年齢を過ぎると現実は見せない。既存の現実認識を捨てきれずに、精神崩壊するから。』


私たちは過去の教育により、社会のシステムを「善し」として刷り込まれてきました。
そのような情報を受けつづけると、その情報を疑い、思考することが出来なくなります。
刷り込まれるのです。
当たり前と思ったり、常識と思ってしまいます。
この言葉は思考を停止させる働きをします。

密教の言う智慧とは「なぜ?」と疑うことです。
現代社会の価値観は明治維新を善とした思考法になっています。
しかし和魂洋才の思想は富国強兵を生み、市場獲得のために満州侵略をせざるを得なくさせたのです。

今の社会のシステムが順調に行っているのでしょうか?
私の歴史認識では、今は西欧近代化の崩壊の歴史を眺めているように思えます。
近いうちに起きる危機は貨幣経済崩壊や環境破壊でしょうか。
それともアメリカとイスラム諸国との核戦争なのでしょうか?

仮想現実世界で空を飛ぶネオ

最初のトレーニングで、ネオはモーフィアスが飛び越えた後に、ビルの谷間を飛び越えようとします。
モーフィアスの助言は「心を解き放つのだ。」
しかし仮想現実と言われていても、まだ完全に信じることが出来ず、高層ビルの屋上から落ちてしまいます。

「心を解き放つ」ことはそれぐらい難しいのです。
ネオの飛行能力は映画の進行に伴って、高速で飛行できるようになります。

お経の中で空を飛ぶ話は、釈迦とその弟子が、
牢獄に閉じ込められているビンバシャラ王とイダイケ夫人のために
霊鷲山から飛んできたという話が有名です。

この世が仮想現実であるという物語は、老子の「胡蝶の夢」でも語られています。
前夜に蝶になった夢を見た老子が、夢が真実で今の自分が夢なのかもしれないと感じるのです。

どちらも現実に縛られすぎている心を自由にすることが出来るのです。
このお話しで少しは「心が解き放たれたでしょうか?」

覚りを得る器と時期

黒服の男たちが信号待ちをしています。
いっせいに渡り始めるとモーフィアスとネオが反対側から歩き始め、人ごみにぶつかります。
ここはマトリックスの中です。

『マトリックスは社会(システム)だ。社会(システム)は敵だ。その中に入ると何が見える?
 ビジネスマン、教師、弁護士、大工。それはまさに我々が救おうとしている人々(心)だ。
 だが今はまだマトリックスの一部で、つまり敵だ。
 彼らはまだ真実を知る準備が出来ていない。彼らの多くがマトリックスに隷属しそれを守るため戦おうとする。』

真実は「この世は何か変だな」と感じる感性(器)のある人にしか伝わりません。
この社会に生まれて、システムに洗脳されると、深く思考することを止めてしまいます。
学歴のあるなしではありません。
目覚めた人々がどんなに伝えようとしても、聞く耳を持たない人には伝わりません。

真実を知る準備は、病気や不幸による挫折(時期)をしないと気づかないことなのです。
釈迦でさえ、覚りの教えは難しすぎると考えて、伝えることを止めていました。
やっと梵天の催促により人々を覚りに導く決意をしたのですから。