|
川の幅は狭まり両側を土手に囲まれた行き詰まりの地点に泳ぎ着きました。
小さな野の花が一面に咲いています。
ぬれた身体で岸辺に上がると、そよ風が吹いています。
どうやらここが最後の、風の国のようです。
脱いだヘルメットを脇に抱え、剣を腰に差し土手を登っていくと、土手の先は見渡す限りの荒野です。
その奥に魔王の住む風の城がそそり立っています。
荒野に一歩踏み込むと、すぐに空から鷲に乗った悪魔が弓矢で攻撃を仕掛けてきました。
矢の攻撃を避けながら、剣を鞘から抜きました。
空を飛ぶ敵に切っ先を向けると、青白い炎はオレンジ色から赤い色に変わり、
レーザービームのように飛んでいきました。
鷲の背に乗っていた悪魔は、熱さにたまらず逃げ帰りました。
空中から秘密のマントラを書いた巻物が落ちてきました。
この巻物を拾い中を見るとマントラは
「ガーテー・ガテー・パラーガテ・パラサムガーテー・ボディ・スヴァハー」と書かれています。
それから3日間歩きつづけました。
遠くに空の城が見えてきます。なんと大きな城でしょう。
城門はありません。城壁は高く、よじ登れそうにもありません。
中央の塔は雲のかなたまで突き上げていて、尖塔の先は見えません。
攻撃が無いようなので、水のステージのように、着ている物を脱ぐことを思いつきました。
軽くなれば城壁を攀じ登ることが出来るかもしれません。
ヘルメットを取り、服を脱いで裸になり、よじ登り始めましたが、
城壁の最後はオーバーハングしていて登れそうにもありません。
やむ終えず下に戻り、城壁の下で足を組み静かに瞑想を始めました。
一週間の時が経ち、月は三日月となりました。
静かに呼吸をしていると、揺らめく風に乗って身体が浮き始めました。
身体は虚空と一体になり、大空の中に浮いて漂い、
城の中腹にある風の庭園に向かって流されていきます。
風の庭園の上空にたどり着きました。
そこには、死んだと思っていた見覚えのある仲間たちが集っています。
庭の中央には巨大な柱が二本並んで天にむかって突き上げています。
その前には祭壇が設けられ、祈りがささげられています。
香が焚かれキャンドルに火が点けられ、荘厳な雰囲気です。
中央にいるマントを着た僧侶があなたを見て両手を上げました。
空中にいるあなたのことに気づき、皆が声を出し始めました。あなたは静かに降りてゆきます。
懐かしい仲間の顔を見ながらあなたはマントラを唱えました。
「ガーテー・ガテー・パラーガテ・パラサムガーテー・ボディ・スヴァハー」
僧侶はその声を聞き微笑みました。
庭園に降り立つと、友人の一人が声を掛けてきました。
彼は火の国で地獄の穴に落ち死んだはずです。
「いやぁ君に会えてよかった。僕はあの穴に落ちたと思った瞬間にこの国にワープして来たんだよ。
ここでは毎日、しもつ国(死を持つ国・地・火・水の国のこと)の人々が苦しんでいる姿を見て、
祈りをささげているんだ。そして順番がくると大魔王に呼ばれて、しもつ国に修行に行くんだ。
僕たちのクリスタルは、まだ硬度が少ないから輝きが足りないけどけど、
どうやら君は最後のクリスタルをもらえそうだね。」
「ここ、この国の名前はかみつ国(神密国=神の密集する国)と言うんだ。」
「君、きみ!!」
振り向くと先ほどの僧侶が声を掛けています。
「ほら大魔王からのお呼びだ!!」
大魔王というと怖そうな顔を想像していましたが、僧は細い身体をした柔らかな仕草で手を差し伸べ、
にこやかにあなたを見つめています。
「私ですか?」
「他に誰がいるかね?空の世界に行けるものは!さあこの柱に入りなさい。」
見ると右の柱は円柱形になっていて、中は一人乗りのエレベーターになっています。
「降りる時は四角いエレベーターで降りてきなさい!!」
その言葉を残して上空に超高速エレベーターは昇って行きます。
軽い衝撃がして目の前の扉が開きました。
夜空に月はなく、虚空に浮かぶ丸い石造りのテラスのようです。
四方をキャンドルの光で照らされた大理石の台座があります。
最後のクリスタルがクッションに乗せられ台座の中央に置かれています。
首からかけていた袋を出し、中をのぞきます。中には硬く結晶したクリスタルが入っています。
いままでの苦労があなたの脳裏を横切ります。心をこめて最後のクリスタルを、袋の中に入れました。
マントラを唱えます。
「ガーテー・ガテー・パラーガテ・パラサムガーテー・ボディ・スヴァハー」
円鏡を毎日見ていたあなたには、自分とは仲間と一つであることがわかっています。
いや、仲間だけでなく、すべての生きとし生けるものが、限りない愛の対象になることを知っています。
自然と人は一体であり、自然はいつでもあなたの体内と循環しているのです。
自然を汚すことは自分を汚すことなのです。
炎の剣を使って修行してきたあなたは、苦しみに耐える力も学びました。
そしてその苦しみを与えたのが、神である事に気づきました。
大魔王は神の変化した姿なのです。
そして今まで出てきた敵キャラも、あなたを修行に導く先生たちなのです。
想い出に浸っていたあなたは、袋を胸に抱きしめ最後のマントラを言いました。
「ありがとう。」「ありがとう。」「ありがとう。」
道を示してくれた敵キャラの姿をした先生たちの姿が一人一人浮かび上がってきます。
感謝の気持ちがあふれ眼から涙があふれました。
涙は真下に落ち胸の袋に触りました。
マントラの言葉は波動となり、虚空に浮いている尖塔から、風、水、火、地の国々に響き渡りました。
すべての存在は輝きを増し、天から一筋の光が降りてきて、クリスタルは輝き始めました。
硬度を増したクリスタルは、もはやクリスタルではなく純粋なダイヤモンドとなっているのです。
無明は消え去りあなたの身についていた魔法はすべて溶け、あなた自身が宇宙意識を持つ光の存在になりました。
でもこれでゲーム・オーバーではありません。
真の気づきを得たあなたは四角いエレベータで風の城まで降り、仲間と祈りをささげたあと
「しもつ国」に降りて人々を導かなければならないのです。
ゲームはまたこれから始まるのです。
|