ケルト巡り

(河合隼雄)

河合隼雄先生、魔女と語る



ユング派の河合隼雄先生が、ケルトめぐりの本の中で、
魔女の看板を掲げて講演や占いをしているプロの魔女と対話している。

「『キリスト教や近代科学だけでは解決できないことがある。』
ということをヨーロッパ人もわかってきたのです。」と魔女が語る。

(河合)
 人生を生きていくには、心の中の「私」との関係がとても大切になる。
 「私」の恋人が死んだ時、「恋人は何で死んだのか?」との問いに「心臓麻痺です。」と自然科学は答える。
 でも「私」の聞きたいことはそこにはない。

(河合)
 自然科学的な智慧の強みは、普遍性を持っている点にある。
 ところが、緩和医療の第一人者である、柏木哲夫さんは
 「ホスピスにこられた人でガンが奇跡的に治る人がいる。」
 「その人々は、自然科学が承認していない方法を、全身全霊で信じた人が治る。」と語る。

 私は「先生それは逆で、治る人は全身全霊をあげて、信じることが出来た人ではありませんか?」と聞いてみた。
 先生は「そうとも言えますね。」と答えた。


原因・結果を簡単にはいえないのだ。
認識のニュアンスを少しでも間違えると、ニセ科学や、ニセ宗教になってしまう。

現代の日本社会では、普遍的部分が強すぎて、そこから出ようとする人が、とんでもない行動に出ることにもなってしまう。
もう少し緩ければ、出たり入ったりが簡単になるのだが。


魔女のタロットに出会う


(河合) 私はタロットについてはよく知らないのです。日本文化は西洋と異質ですし。

(魔女) そうですね、タロットはいろいろな記号が表れます。

(河合) 記号性を学ぶのに、タロットカードを使うことはあります。

(河合) あなたはカードに出た基本的な心理状態を伝え、相談者はそれを聞いて具体的な事実を話し始めます。
      ああしなさい。こうしなさいとは言いませんね。

(魔女)  相談者に「こうしなさい」とは言いません。選択肢を示すだけです。
           相談者の力をそぐ場合もありますから。本人に選択して欲しいのです。
           天気予報のようなものです。予報を聞いて行動を起すかどうかは本人次第です。

                               ・・・・・・・中略・・・・・・・・

(河合)  あなたにとって「魔術」とはなんですか?

(魔女)  相談者は問題や悪循環を抱えてここにやってきます。
           その問題は無意識の中にあります。
           意識を通じて無意識に働きかけることは困難ですが、
           記号や儀式では直接無意識に働きかけることが出来ます。
           それが魔術だと考えています。

(河合)  儀式やおまじないはしないのですか?

(魔女)  必要に応じて行います。

                               ・・・・・・・中略・・・・・・・・

(河合)  意識から無意識に到達するのは難しいことですが、物語は無意識に到達する有効な手段です。
          相談者に話しをさせることは、効果的だと思います。
          それにそれぞれのカードには物語がありますし。

(魔女)  カードを読み解くうちに物語が生まれ、さらに私の言葉を解釈するために物語が生まれます。
           カードはメタファーと言えます。相談者は自分自身の物語を発見するのです。

(相談者)  伝説に、赤い糸を握って地下の世界へ行き、探し物を見つけて戻ってくる話があります。
              彼女(魔女)は、糸の一端を持って助けてくれるような人です。

(魔女)  糸は可能性を信じる力を象徴します。
           私には人の可能性を導き出す才能があると思います。

(河合)  この壁の感謝状は、あなたが偉大だからですか?

(魔女)  私は方向性を示しただけで、行動するのは本人です。

(河合)  すべてがあなたのおかげではなく、糸の一端を握って相談者に方向を示したということですね。

(魔女)  私は、いわば隠者のカードです。どうこうしろとは言わず、ただ明かりを灯している。
           問題を解決するのではなく、解決する方法を伝えるだけです。
           私は相談者が、自らの火を灯すのを見守るだけです。
           魔女の杖で問題を消し去るわけではありません。手段を示すのです。
           やりがいのある仕事だと思っています。





















密教は象徴言語(印とマントラ)を使う魔術です。
その動作とバイブレーションが、無意識に働きかけるのです。

しかし、普遍性があるものではありません。
そこで、クライアントの世界観を読み解く「人を見て法を説け」の能力が必要になるのです。

そのために深層心理学は大変役に立ちます。