「義経と弁慶」の密教講座

NHKドラマで、義経が放映されました。
その当時の義経と弁慶を描いた謡曲が、船弁慶です。

ここでは義経が怨霊と剣を交えている時に、不動明王を初めとする五大明王が弁慶の祈祷で現れ、
怨霊を退治する様子が描かれています。

『そのとき義経少しも騒がず、打ち物抜き持ち、現の人に向かうが如く、言葉を交わし、戦ひたまえば、

 弁慶押し隔て、打ち物業にて、かなうまじと、数珠さらさらと押し揉みて、

 東方降三世、南方軍荼利夜叉、西方大威徳、北方夜叉明王、中央、大聖不動明王のサックにかけて、

 祈り祈られ、悪霊しだいに遠ざかれば、弁慶舟子に力を合わせ、お舟を漕げのけ、水際に寄すれば、

 なお怨霊は慕い来るを、追っ払い祈り除け、また、引く潮に、揺られ流れ、また、引く潮に揺られ揺られて、

 跡白波とぞなりにける・・・・・。』

「数珠を押し揉む」とは真言宗の技術で金剛合掌をしたまま、
祈る動作の時に、数珠を2〜3回揉んで、如来の助力を仰ぐ仕草です。

この時に五大明王の結界を四方に張ることにより、怨霊が結界のうちに侵入してこなくなるのです。
その当時でも現象世界でかなわないと、精神世界の戦いが繰り広げられたのです。

また奥州に落ち延びる義経は、安宅の関でその身分がばれそうになります。
その時に弁慶が関所役人・富樫に次の文章を述べることによって、
彼らが正式な修験であるとの証明になるのです。

その当時の山伏(修験)の装束の意味を述べながら、神仏の罰が当たると脅しているのです。
これも精神世界の現象を、現象世界に持ち込む面白い例です。

『それ山伏といっぱ(言えば)、役の優婆塞の行儀を受け、その身は不動明王の尊容をかたどり、

 トキンといっぱ、五智の宝冠なり。

 十二因縁のひだを据えて頂き、九会(金剛界)曼荼羅の柿のスズカケ(上着)、胎蔵黒色のハバキ(ズボン)を履き、

 さてまた八つ目のワランジは、八葉の蓮華を踏まえ出て入る息に阿吽の二字を唱え、即身即仏、

 山伏を、ここにて討ち止めたまわんことを、明王の照覧、計り難う。(不動明王は許しておかないだろう。)

 熊野権現の、ご罰の当たらんこと、たちどころにおいて、疑いあるべからず。』
義経は、霊気の臼井先生の修行した鞍馬山で修行をしていました。
謡曲にはこのような精神世界の物語が数多く残されています。

この番組をきっかけにぜひ、能や謡曲や密教の世界が、身近になりますことを期待しています。